人も自然のヒトかけら。 森、水、土の中で その感覚を思い出す時間。

Journal 体験

山に泊まるということ

山に泊まるということは、
ただ一晩、山の中で寝ることではありません。

日帰りの登山では通り過ぎてしまう時間が、
ゆっくりと身体の奥へ降りてきます。

目的地へ向かうことだけを考えていた足が止まり、
気づけば森の音や風の

匂いに耳を澄ませている。

山の中で過ごす夜は、
日常と非日常のあいだにある時間です。

スマートフォンも届かない。

仕事の肩書きも少し遠くなる。

親であることも、
会社員であることも、
社会の中での役割も、
ほんの少しだけ脇に置かれる。

そこには「何者でもない自分」でいられる時間があります。

昔から人は、
人生の節目に山へ入りました。

巡礼や修験道、通過儀礼。

日常を離れ、
一度あいまいな場所へ身を置き、
新しい自分として帰ってくる。

山には、そんな力があります。

屋久島には、千年を超えて生きる森があります。

長い時間と関係性の中で、
紡がれ、結ばれてきた森です。

そこにある物語に耳を傾けるには、
森に泊まってみるのがいい。

歩くことだけが目的なら、
日帰りでもたどり着けます。

けれど山泊まりの魅力は、
目的地そのものではありません。

夕暮れの静けさ。

暗闇の深さ。

朝露の匂い。

誰かと交わす何気ない会話。

あるいは何も話さない時間。

そんな余白の中で、
少しずつ自分の輪郭が見えてきます。

『人も自然のひとかけら』

ほんのひとかけらかもしれません。

それでも、
自分もまた自然の一部であると感じられる瞬間があります。

自然に合わせるというより、
自分の速度が自然の速度へ戻っていく。

山泊まりとは、
何かを達成するための体験ではなく、
自分自身との関係を取り戻す時間なのかもしれません。

SOILの山泊まりは、
ただ縄文杉へ行くための一泊ではありません。

ただ山頂を目指す旅でもありません。

私たちが大切にしているのは、
目的地へ連れていくことではなく、
そこへ向かう時間を一緒に生きること。

森の中で過ごす一夜は、
自然体験で終わらない、
“心の土壌を耕す旅”の入り口です。

そんな時間をあなたと紡いでいきたいです。

特集カテゴリー 山泊まり

松田浩和

移住10年

自然体験ガイドとして山・海・里をフィールドに活動。
スキンダイビングや登山、沢登りなどの体験を通して、「自然と共にある」だけでなく「自分も自然の一部である」という感覚を届けることを大切にしている。

近年は登山道整備や近自然工法にも携わり、利用と保全のあいだをつなぐ再生型の島づくりを模索中。

SOIL Yakushima代表。