NHK「百名山 ヤマたび! 初夏の風、薫る 花の屋久島」で、案内役をさせていただきました。
オンデマンドでの配信も始まり、ようやく自分でも見ることができました。
今回のロケでは、ただ山の頂を目指すのではなく、屋久島の山々が育んできた風土をたどるような旅をしました。
旅人は、斎藤帆奈さん。
粘菌という原生生物を使って作品を制作している現代美術作家です。
初めましてでしたが、出会った瞬間から伝わってくるキュートさと面白さ。
そして一緒に歩いていると、
「帆奈さん、感覚を言葉にするプロだなぁ」
と思う瞬間が何度もありました。
身体で感じたことと、科学の目線。
その二つが混ざった帆奈さんの言葉にはたくさんの気づきがあって、自分自身も新しい自然との関わり方を教えてもらいました。

今回歩いたのは、花山歩道。
屋久島の中でもかなりハードなルートですが、その分、深い原生林の中を歩くことができます。
そして今年は、10年、20年に一度とも言われるヤクシマシャクナゲの当たり年。
稜線はもちろん、樹林帯の中でも大開花。
思わず笑顔がこぼれます。
朱色の蕾からピンクへ。
そして白くなり、やがて散っていく。
そんなヤクシマシャクナゲに見守られながら、永田岳、宮之浦岳、黒味岳の「屋久島三岳」をつないで歩きました。

実は2024年にも「にっぽん百名山 洋上アルプスの森をゆく~屋久島・宮之浦岳~」で、宮之浦岳を案内させていただきました。
そのときから、自分の中でも少しずつ「ガイド」という仕事への捉え方が変わってきたように思います。
今回の「ヤマたび!」で自分がテーマにしたのは、
「流域」
でした。
屋久島の魅力は、山だけではありません。
山に降った雨が森を通り、
沢になり、川になり、
人の暮らしのそばを流れ、
やがて海へと還っていく。
そしてまた、海から水蒸気となって山へ戻ってくる。
山と海は別々にあるのではなく、ひとつの大きな水の循環の中でつながっています。
その水の循環の中に森があり、生き物がいて、人々の営みがあり、屋久島の風土がある。
だから最近、自分はこんなふうに思っています。
ガイドとは、ただの道案内人ではなく、風土の翻訳者なのかもしれない。
屋久島に暮らして10年。
ガイドとしての視点。
写真家としての視点。
生物学を学んできた視点。
そして、この島で暮らしてきた一人の島民としての視点。
そこに帆奈さんの現代美術作家としての視点や、粘菌という生き物から世界を見る視点、身体や神経、脳から世界を捉える視点が混ざり合いました。
同じ森を歩いているのに、見えている世界が少しずつ違う。
それが、とても面白かった。

特に印象に残っているのが、永田岳で迎えた朝です。
稜線にかかる滝雲を眺めながら、
自分は、その向こうにある黒潮の海を想像していました。
帆奈さんは、流体として生きる粘菌を想像していました。
同じ風景を見ていても、感じるものは人それぞれ。
それぞれが美しさを受け取り、ときには言葉にして混ざり合う。
そして、ときには何も言わず、ただ同じ時間を過ごす。
そんな時間こそ、旅の中でずっと残っていくものなのかもしれません。
賑やかで愉快な撮影クルーのみなさんと歩いた、美しくてDEEPな屋久島縦走。
ぜひ番組でご覧ください。
そしてもし、
「この森を自分の足で歩いてみたい」
「山頂へ行くだけではない屋久島を旅してみたい」
と思ってもらえたなら。
花山歩道、永田岳、宮之浦岳をつなぐ縦走をはじめ、その人に合わせた屋久島の旅をご一緒できます。
番組で歩いた道をそのままたどる必要もありません。
森に泊まり、朝を迎える。
水の流れをたどる。
山から海を眺める。
その人だから見える屋久島を、一緒に探しにいけたらと思います。